福岡高等裁判所 昭和52年(ネ)355号 判決 1981年3月25日
控訴人
西日本鉄道株式会社
右代表者代表取締役
吉本弘次
右訴訟代理人弁護士
村田利雄
(ほか二名)
被控訴人
石部隆次
右訴訟代理人弁護士
山口伊左衛門
(ほか二名)
右当事者間の地位保全仮処分申請控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人の申請を却下する。訴訟費用は第一、二審を通じ被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、主文と同旨の判決を求めた。
当事者双方の主張及び証拠の関係は、次のとおり証拠関係を付加するほかは、原判決の事実摘示と同一であるから、これを引用する。
《以下証拠略》
理由
一 当裁判所も、被控訴人の申請は理由があり、これを認容すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。
1 原判決一一枚目裏一行目の「第一三号証」の次に「第一四号証の一、二、五、疎乙第二八号証、第四二号証の一ないし三、第四三号証の一、二」を加え、同八行目の「第二六号証」の次に「原審証人福田利幸の証言により成立の認められる疎乙第三一号証」を加え、同九行目の「第三三号証」の前後に「第九、第一〇号証」、「第三八号証、第四一号証」を加え、同一一行目の「同金子竹春」の次に「当審証人斉藤彰、同長井賢祐」を加える。
2 原判決一二枚目表一二行目の「昭和四五年」以下同裏二行目までを次のように改める。
そして、右労使合同適正化委員会(以下「適正委」という。)は、同年六月ころから活動を始め、同年一〇月二八日の適正委において、収入金取扱管理のあり方改善の一つとして、所持品検査にあたっては安全地帯を作らないことを再確認し、その方法として、会社施設内の担当箱、自家用車等は本人立会のうえ検査することができること等を再度明確にすること等を申し合せた。そして、適正委における協議は、その後も続けられた。
3 原判決一二枚目裏三行目から同末行目までを次のように改め、同一三枚目表二行目の「右決定」を「適正委における前記決定」に改める。
しかし、その後においても所持品検査で金銭を携帯している者が発見された。そこで、適正委では、昭和四六年四月二八日、同委員会における申合せ事項を労使双方が協力して更に周知徹底させる方法を協議し、会社は、私金携帯を禁止されている者に対しては、(イ)各営業所に告示文(疎乙第七号証)を掲載する、(ロ)業務研究会で指導を行う、(ハ)家族に協力要請文(疎乙第五号証)を送付する、(ニ)個人面接による指導を行い、全員に指導を受けたことを実施する旨の確認印を求める等の方法を講ずることとし、組合は、中央委員会として警告文や機関誌を通じて、組合員に対し、決ったルールを守るよう訴えた。
これに先立ち、適正委における協議の過程で、就業規則中私金の取扱いに関する条項に「携帯」(六条等)とあったり、「所持品」(七条等)とあったりして、用語の統一を欠くとの声があったため、会社は、右関係部分をすべて「携帯もしくは所持」又は「携帯品および所持品」に訂正することとし、昭和四五年一二月一日右就業規則の改正について組合の意見を求め、昭和四六年三月四日右意見の提出を得て、同年四月九日所轄官庁に就業規則改正の届出をした。
4 原判決一七枚目表一行目を次のように改める。
(4) 確認書に押印するかわりに理由書を提出してもよい。但し、右理由書は、右(2)にいう誓約と確認の趣旨を明記したものでなければならない。
5 原判決一八枚目表六行目の末尾に「右認定に反する当審証人長井賢祐の証言は、前掲各証拠に照して採用することができない。」を加え、同九行目の「執行部提案」から同一〇行目の「確認された。」までを「適正委に臨む組合の態度が協議された。」に改め、同一九枚目表七行目の「これでは」から同一〇行目の「問題がある。」までを削り、同一九枚目裏九行目の「そして」から同一一行目の「報告されている。」までを削る。
6 原判決二〇枚目表四行目の「右就業」から同五行目の「ものであって」までを削り、同八行目の「乙第一号証の一」の次に「第四二号証の一」を加え、同九行目と同二一枚目表一一行目の「同小畑寛士」を「原審及び当審証人小畑寛士」と改め、同二〇枚目表九行目と同二一枚目表一二行目の「申請人本人」の前に「原審及び当審における」を加え、同二〇枚目裏八行目、同二一枚目表一〇、一三行目の「組合員」を「乗務員」と改め、同二一枚目裏一一行目の「述べている。」を「述べ、当審証人斉藤彰も同旨の証言をしている。」と改める。
7 原判決二二枚目裏八行目と九行目の間に次の一項を加える。
また、会社は、本件確認書に押印しないならば、理由書を提出すれば足りるようにいうが、前掲乙第四二号証の二によると、会社のいう右理由書の内容は、被控訴人に委せられるものではなく、会社の示す内容のもの、すなわち、本件確認書第一ないし第三項を実行することの誓約と第四項どおりの指導を受けた旨の確認の趣旨を明記したものでなくてはならないとしていることが一応認められるので、被控訴人が理由書も提出しなかったことの責任を問うのも相当でない。
8 原判決二三枚目裏九行目から一〇行目にかけての「右は組合活動の一環と認められ」を削る。
二 以上の理由により、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担について民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 矢頭直哉 裁判官 権藤義臣 裁判官 小長光馨一)